■目次
ブランド化のメリット
戦略的ブランド化への思考力
はじめに
こんにちは。影谷です。
本日は、とある方の商品に関するブランド戦略のお話をお伝えしたいと思います。
私がブランド戦略を行う上でとても参考になったので、ご紹介いたします。
以前ご紹介した記事に「ブランドの作り方」という兵庫県豊岡市長・中貝宗治さんもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
ブランドの作り方 /豊岡市長・中貝宗治
こんなお悩みを解決します。
✔本記事の内容
✔ ブランド戦略のポイント
✔ ブランド戦略の方法(実践例)
✔記事の信頼性

この記事を書いている私は、過去に赤字経営だった事務所経営を黒字化し、年商2億円を売り上げていました。
現在も事業イベントプロデュースのビジネスに携わる傍ら、日本中の知識人から学んだ経営術を伝える当ブログを運営しています。
特に対面営業と経営実務に関することを追求することが好きです。
販売チャネル
あなたの事業が仮に店舗を構えて商品販売したり、サービスを提供する業種であればエリア固定型販売業ということになるでしょう。
昨今はインターネットなどの仮想販売ツールも多様化されていますので、小売の販売手段というのは多様化しています。
魅力的な商品やサービスが提供できるであれば、店舗を構える立地条件などは関係ないという場合もありますね。
今回ご紹介する経営者は、演奏で使用する楽器のある一つのパーツにだけ特化して、オーダーで製作する仕事をしています。
店舗も構えていますが、都心から全くかけ離れた田舎で展開しています。
本人が「田舎暮らしがしたい」という夢を叶えるための移転だったのですが、顧客からすれば「そんなところどうやっていくんだ!」と、怒られることもあったそう。
しかし、それでも商品のクオリティが顧客を120%満足させられるものであれば、そんな声はすぐに消えると彼は言っていました。
ブランド戦略のポイント
彼の特出すべき戦略ポイントは3つ。
1、その楽器のたった一つのパーツのみ、独占的に製作するということ。
2、とってもニッチなポイントを専門的に神の域まで技術を昇華させたこと。
3、誰も見向きもしなかったパーツを自分の最大主力製品としたこと。そしてそのパーツは製作が簡単であること。
この戦略によって彼の事業は大当たり。
彼はその分野で唯一無二の存在となりました。
この成功の裏に隠されたカラクリを話せば、このヒットには彼の巧妙なブランド戦略マーケティングがあるのです。
※写真はイメージです。彼の取り扱うパーツでは有りません。
まず彼の作っているパーツは大手企業メーカーも手掛ける部品でした。汎用性も高く、高額になりえないたった一つのパーツ。
しかしこのパーツがなければ演奏家は演奏することができません。消耗品でもあるので大手メーカーは大量生産(安価)を行っていました。
そしてこの楽器の演奏者たちですらも、これまでこのパーツの重要性など微塵も感じていませんでした。
つまり汎用性の高い、なんでも間に合う存在だったのです。
そしてこの部品を高級化したところで音の音色や演奏技術が格段に上がるというものではないというのが通例の考えだったので大手メーカーもそこにかける費用対効果はないと思っていました。
ギターで言えば「ピック」みたいなものでしょうか。
しかし彼はこの部品に注目し、この部品をダイヤモンドに輝かせようと戦略を練ったのです。
そして実行に移しました。やったことは3つ。
1、商品へのブランド化
2、自分へのブランド化
3、店舗へのブランド化
1.商品のブランド化
「1の商品へのブランド化」は簡単ですよね。
商品への顧客満足度を上げるために日々精進しクオリティの高い商品を提供し続ける(実はこれが一番難しい)。彼はその技術力は折り紙付きでしたから、この作業には注力していませんでした。経験がものを言うらしく、製作作業に没頭すればよいのです。自分の腕を磨き続けるという「大量行動」は自分だけの力になります。この力は最大のブランドです。
次にやったのは広報的戦略。一流プレイヤーへの試作提供。有名プレイヤーへ無料提供する代わりにその商品をPRしてもらう。観客というよりもプレイヤー同士へのクチコミを広げてもらうということですね。
昨今はSNSなどもすごいですから良いものであればすぐに拡散されます。有名プレイヤーは学生からのフォローも多いので、あっという間に需要が広がりました。
この手法は定番ですよね。テレビでのタレント貸衣装なんかもこの類いです。
ブランド戦略でもっともポピュラーでしょう。
そしてここからが彼の面白いところ。
2.自分へのブランド化
「2の自分へのブランド化」ですが、圧倒的に増えた需要に対してすぐに商品出荷をしないということなのです。
彼のパーツは手作り製品です。言ってしまえば職人。
先ほども記載しましたが、彼の作るパーツは簡単に製作できるという利点があります(もちろんですが、私のような素人には当然無理です)。大量生産はもちろんできませんが、ある程度の数には応えられるように工夫はしていたそうです。
しかし、彼はあえてそれをしませんでした。
それはなぜか。
彼は職人としてのブランド化を押し上げるために、自身へのプレミア感を演出するために「供給の制限」を実行したのです。
受注生産、3ヶ月待ち。
一気に出荷することは簡単です。出荷ができれば彼の数ヶ月の利益は増加し、家庭も潤うことでしょう。
しかし彼は一時の利益増加よりもあえて制限を行うことによって未来への投資を行ったのです。
ここで目先の利益を追うよりも末長く広がるマーケット作りをしたい。
こう考えたのでした。
これは私が以前紹介した井筒八ッ橋本舗の津田会長のも言っていたことですね。
末長く続く企業をつくるには、この思考力は経営者として必要でしょう。
利益より永続を求めよ ㈱井筒八ツ橋本舗 会長・津田純一
人は「欲しい」と思った時に手に入らないと「人気⇒品薄⇒良いもの」とイメージします。
彼のブランディングはその思考を最大に生かしたブランド戦略でした。
3.店舗へのブランド化
そして最後の「3、店舗へのブランド化」ですが、これも面白い。
彼はブランド戦略の1つとして店舗をあえて交通の便が悪い郊外に構えました。
これは彼が田舎に住みたかったという夢でもあったのですが、店舗をあえて自然豊かな田舎に構えることによっておいそれとは行けないプレミア感を作ったのです。
また彼の商品は木製です。木製=田舎という人が思い描くイメージに寄り添った戦略でした。
大きい声では言えませんのであえて伏せていますが、彼が作る素材となると木は外国産です。
彼いわく「日本産は高くて到底手が出ない。そして高いわりに品質もこのパーツをつくるには向いていない。外国産は廉価で品質も安定している。みんな国産が良いと思ってるけどそうじゃない。モノには向き不向きがある。でもそれでも国産にこだわる人は多い。そんな場合、希望通り製作は行うが、当然高額になる。でもそれじゃ学生たちはどうなる。一流プレイヤーが使っていたから購入したのに、実際はそれとは違うものだった。ガッカリしないか。だったらはじめから国産とうたわず、製作する環境、部品のために自然豊かな店舗で製作していますとうたっている方がよっぽど良い。下手な説明はなしでね。」
部品調達は田舎でなくてもできるが、仕入れた木材を大量に乾かす作業は田舎の方が向いている。だから嘘ではないと彼は言いました。
「その田舎というイメージが重要なのだと。」
これは彼なりのブランド戦略思考力なのだと思います。
京都の飲食店・カフェなんかも同じようなことが言えますよね。
とんでもなく交通の便が悪い場所にあるのに、ようやく店舗にたどり着いたら3時間待ちの大行列という現象。
これは「京都」という絶対的立地ブランドと「行きにくい⇒隠れ家⇒自分だけのおすすめスポット」というイメージに繋がり、大繁盛になるのかも知れません。
人はイメージを大切にしている生き物です。
ブランド戦略の応用
あなたの事業がどのようなものかによりますが、この基本戦略はどの業界にも当てはまるのではないでしょうか。
私の扱っている商材「伝統芸能」で、とてもニッチな存在です。
彼のように有形物を販売するということではないのですが、戦略的思考力に脱帽し、大いに学ばせてもらいました。
私(商材)は、まず戦略を考える上で自分の位置、つまりポジショニングを意識することが多いです。
自分の位置が判ればどのような戦略を打ち出せるかということが理解できるからです。
その視点を活用し、彼から学んだブランド戦略を織り交ぜて我社を社会的地位獲得に向けて取り組んだことがありました。
なんせ70年も続く会社のブランド化です。
その作業はそう簡単ではありませんでしたが、私はその自分の会社の元あるブランドをわかりやすく丁寧に伝える作業に着手しました。
そしてその結果、認知率が10%向上するという結果が生まれました。
手作りパーツを作る彼は自然とこのポジショニングをとらえてニッチな産業を数字に化けるシステムを開発できたのでしょう。
そして永続する産業として世間へ認知させました。
今では同じように参入してくる新規製作者まで現れたようで、これは世の中が彼の偉業を認めたということなのだと思います。
私も「我社のニッチな世界をもっと広げたい!!」と彼に相談したことがありましたが、「君のところは十分世間に知られてるよ(笑)、あとはもう一歩、爆発ボタンが押されたらいいんだけどなー。」と言われてボタンを探して数年が経ち、何度かボタンらしきものを押してみたのですが、未だに爆発してません(笑)
いかがでしょうか?
あなたのブランド戦略について、ヒントになれば幸いです。
「黄金の知恵袋」
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
追記
ちなみに余談ではありますが、彼はパーツ作りのプロフェッショナルですが、経営財務はてんでダメ(笑)。売り上げもかなりあったぽいので、「モチはモチ屋だぜ!」ということで私の紹介で新田会計事務所を紹介し、顧問契約をしています。
彼もまた「本業に専念できるわ!」と喜んでくれました。